はじめに
「うちの商品は他社より絶対に良いのに、なぜ売れないのだろう?」「品質には自信があるのに、お客様に選んでもらえない・知られない」。このような悩みを抱えている企業経営者や営業責任者の方は多いのではないでしょうか。特に沖縄の中小企業では、真面目にモノづくりやサービス提供に取り組んでいるのに、思うような結果が出ずに困惑し、半ば諦めているケースをよく見かけます。
実は、商品やサービスの品質が高いことと、それが売れることの間には大きな溝があります。この溝を埋めるのがブランディングの役割です。しかし、多くの経営者がこの重要性に気づかず、「良いものを作っていれば、いつか必ず売れる」という思い込みに囚われてしまっています。
この記事では、なぜ良い商品が売れないのか、その根本的な理由を明らかにし、ブランディングによってどう解決できるのかを具体的に解説します。読み終わる頃には「なるほど、だから売れなかったのか」と腑に落ち、明日からの営業活動や商品開発に活かせる視点が手に入るはずです。
【結論】 モノが良いのに売れない理由とブランディング
良い商品が売れない主な理由は「お客様から見えていない」「伝わっていない」「選ぶ理由がない」の3つに集約されます。これらはすべて、商品の品質とは関係のない問題です。
まず、どんなに優れた商品でも、お客様に存在を知られていなければ購入されることはありません(認知の問題)。次に、存在は知られていても、その良さが正しく伝わっていなければ、やはり選ばれません(伝達の問題)。そして最も重要なのが、他社商品との違いや選ぶべき理由が明確でなければ、お客様は迷ってしまい、結果的に購入を見送ってしまうことです(購買動機の問題)。
一方で、ブランディングができている会社の商品は、必ずしも品質が最高というわけではありません。しかし、お客様に「なぜこの商品を選ぶべきなのか」が明確に伝わっているため確実に売れ続けています。つまり、商品の品質向上と同じかそれ以上に、「認知の仕掛け」「伝える力」「動機の明確化」が重要なのです。
ブランディングは単なる見た目の改善ではありません。お客様の視点に立って、商品やサービスの価値を正しく伝え、選ばれる理由を作り出す戦略的な取り組みです。この記事が、あなたの会社や商品が持つ本当の価値を“お客様に届ける方法のヒント”となれば幸いです。
【やさしく解説】 売れないのには、理由がある
多くの中小企業が陥る最大の落とし穴は「つくり手目線での商品開発」です。技術力や品質にこだわるあまり、お客様が本当に求めているものとズレが生じてしまいます。
例えば、“収納性能を極限まで高めた住宅”のようなケースです。確かに収納は重要ですが、お客様の優先順位は「日々の生活の快適さ」の方が高いかも知れません。それを無視したような供給する側の“エゴ”では、お客様の関心は惹けないことがほとんどです。
さらに問題なのは、専門用語や業界用語を多用して説明してしまうことです。お客様は専門家ではありませんから、難しい説明を聞いても価値を理解できません。むしろ「煙に巻こうとしているのかな」という不信感がつよくなるばかりです。
現代のお客様は毎日大量の情報に接しています。スマートフォンやインターネットの普及により、商品やサービスの情報が溢れかえっているのが現状です。この情報の洪水の中で、あなたの商品の良さが埋もれてしまっているかもしれません。
特に問題となるのが「情報の渋滞」です。せっかく良い商品を開発しても、その情報が適切なタイミングで適切な人に届かなければ効果はありません。競合他社も同じように情報発信をしているため、あれも言いたい、これも言いたいでは、一つ一つは真実でもお客様の印象は薄れるばかりです。
解決策は、情報の「量」ではなく「質」と「タイミング」にこだわることです。お客様が本当に知りたがっている情報を、適切なタイミングで、分かりやすい形で提供することが重要です。
「良いものを作っていれば、いつかお客様に認めてもらえる」「口コミで自然に広がっていくはず」こうした考えは、残念ながら現代のビジネス環境では通りません。
この楽観主義の背景には「商品の良さは客観的に判断できる」という思い込みがあります。しかし実際には、商品の価値は主観的なものです。同じ商品でも、人によって感じる価値は大きく異なります。だからこそ、積極的に価値を伝える努力が必要なのです。
さらに、市場環境は常に変化しています。今日良いとされる商品も、明日には新しい商品に取って代わられるかもしれません。待っている間に、競合他社が先手を打って市場を奪ってしまう危険性もあります。
重要なのは「良いものを作る」と「それを伝える」を同時並行で進めることです。商品開発と同じくらいの情熱とリソースを、価値を伝える活動に注ぐ必要があります。
お客様は商品やサービスを購入する際、その背後にある会社や経営者の姿勢も評価しています。しかし多くの中小企業では、商品の説明と会社の理念や価値観が別々に語られているため、お客様にとって一貫した印象を与えることができていません。
例えば、環境に優しい商品を販売している会社が、自社の事業活動では環境への配慮が不十分だった場合、お客様は矛盾を感じてしまいます。逆に、地域愛を大切にする経営者が作った商品は、同じ品質でも「地域のために購入したい」という感情を生み出すことができます。
沖縄の中小企業の場合、地域への貢献や伝統文化の継承、家族経営の温かさなど、本土の大企業にはない魅力的な要素を持っています。これらの要素と商品の価値を結びつけて伝えることで、単なる機能的な価値以上の付加価値を創造できるのです。
大切なのは「なぜこの商品を作るのか」「どんな想いで事業をしているのか」といったストーリーを、商品の説明と一緒に伝えることです。お客様は商品だけでなく、その背景にある物語にも価値を感じるからです。
現代のお客様は「選択肢が多すぎて決められない」という状況に直面しています。似たような商品やサービスが数多く存在する中で、何を基準に選べばよいのか分からなくなってしまうのです。
この状況で重要になるのが「選ぶ理由の明確化」です。他社商品との違いを明確に示し、「なぜこの商品を選ぶべきなのか」をお客様に分かりやすく伝える必要があります。価格や機能だけでなく、感情的な価値や社会的な意義なども含めて、総合的な選択理由を提示することが重要です。
また、選択肢を絞り込んであげることも効果的です。「こんなお客様にはこの商品がおすすめ」「このような用途であればこちら」といったように、お客様の状況に応じた推奨を行うことで、決断をサポートできます。
商品の購入決定は、論理的な判断だけでなく感情的な要素も大きく影響します。機能や価格の比較だけでは伝わらない「使ってみたい」「欲しい」という感情を呼び起こすことが重要です。
多くの中小企業は商品のスペックや機能説明に偏りがちですが、それだけではお客様の心を動かすことができません。「この商品を使うことで、どんな気持ちになれるのか」「どんな体験ができるのか」といった感情面での価値を伝える必要があります。
例えば、清掃サービスを提供する会社であれば、単に「きれいになります」ではなく「帰宅時のほっとした気持ち」「家族との時間を大切にできる安心感」といった感情的な価値を伝えることで、より強い購買動機を生み出せます。
感情に訴える力を高めるためには、実際にお客様がどんな感情を抱いているのか、どんな体験を求めているのかを深く理解することから始まります。そして、その感情や体験を商品の価値として表現し、伝えていくのです。
まとめ
良い商品が売れない理由は、商品自体の問題ではなく「伝え方」と「見せ方」の問題であることがほとんどです。客観的にお客様として物事を考え、情報を整理し優先順位をつけ、選ぶべき理由を明確に示すことができれば結果は好転していくと考えてよいでしょう。
ブランディングは、これらすべての課題を解決する包括的なアプローチです。商品の価値を正しく伝え、会社の姿勢と結びつけ、お客様の感情に訴えかけることで、選ぶべき理由を明らかにするものです。
まずは自社の商品やサービスを、お客様の目線で自社製品を見直すことから始めてみませんか。きっと新たな発見と好転の兆しが見つかるはずです。
