ブランドには”実体”が必要です(ビジョンとミッションとバリュー)

ブランドのVMV(ビジョン・ミッション・バリュー)における「背骨」と「構造」を象徴する自然の造形美

はじめに

ブランドづくりに取り組もうとするとき、多くの企業がまず手をつけるのは、ロゴマークやキャッチコピーといった「外側の部分」です。もちろん、それらも大切な要素ではあります。しかし、本当にお客様から選ばれ続けるブランドを築くには、もっと根本的な「内側の部分」が必要です。

「内側の部分」とは、ブランドの”実体”です。外の部分ではなく、“魂”のようなものです。それは、「私たちは何者で、何を目指し、何を大切にしているのか」という、企業の核となる部分。これがなければ、どれほど美しいロゴを作っても、どれほど巧みな宣伝文句を並べても、ブランドは空っぽなものになってしまいます。

この記事では、ブランドに実体を与えるための基本的な枠組みである「VMV(ビジョン・ミッション・バリュー)」について解説します。この記事を読むことで、自社のブランドに確かな軸を持たせる方法が理解でき、明日からのブランドづくりに具体的な一歩を踏み出せるようになるでしょう。初めての方でも実践できる内容ですので、ぜひ最後までお付き合いください。

【結論】 VMVはブランドの”背骨”である

ブランドに実体を持たせるには、VMV(ビジョン・ミッション・バリュー)を明確に設定することが不可欠です。VMVとは、企業が目指す理想の未来(ビジョン)、その未来を実現するために果たすべき使命(ミッション)、そして、ミッションを実行しうる事実や技術、または、日々の行動で大切にする価値(バリュー)のことを言います。

多くの企業がブランディングに失敗する理由の一つに、VMVが曖昧なままであったり、どこかで聞いたことのあるような表面的なもので進めてしまったり、ということが挙げられます。「なんとなく良さそうなフレーズが見つかった」「他社の成功例を参考に色や形を変えてロゴにした」。こうした場当たり的なアプローチでは、一貫性のあるブランドは生まれません。お客様は敏感です。企業の「軸の無さ」は、すぐに見抜かれます。

VMVはブランドの”背骨”です。背骨がしっかりしていれば、どんな施策を打っても、どんなコミュニケーションをしても、ブレることなく一貫したメッセージを届けられます。社内のスタッフ全員は同じ方向を向いて働けるようになり、お客様からは「信頼できる会社・商品・ブランドだ」と認識されるようになります。

VMVの創出に、言葉遊びは不要です。自社の存在意義を問い直し、未来への道筋を描き、日々の判断基準を明確にする、極めて実務的な作業です。時間はかかるかもしれませんが、この土台がなければ、ブランドは強くなりません。中小企業であっても、いえ、中小企業だからこそ、VMVを持つことは必要です。大企業にはない「らしさ」を武器に、同じ土俵で互角以上の戦いができる可能性が出てくるからです。

【やさしく解説】 VMVを理解し、自社のものにする

POINT
「ビジョン」「ミッション」「バリュー」とは何か

まず、VMVとは何かを整理しておきましょう。これらは似たような言葉に聞こえるかもしれませんが、それぞれ異なる役割を持っています。

ビジョン(Vision)は、企業が描く「理想の未来」です。5年後、10年後、あるいはもっと先に、自分たちはどんな世界を実現したいのか。お客様や社会がどんな状態になっていてほしいのか。これを言葉にしたものがビジョンです。ビジョンは、企業の目指すべき方向を示す「北極星」のような存在といえます。

ミッション(Mission)は、そのビジョンを実現するために「自分たちが果たすべき使命」です。理想の未来に向かって、今この瞬間、自分たちは何をすべきなのか。お客様にどんな価値を届けるべきなのか。ミッションは、日々の事業活動に意味を与える「道しるべ」です。

バリュー(Value)は、ビジョンとミッションを達成するための「自社がもつ事実(ファクト)」、または「大切にする価値観や行動指針」です。自社の機能的なストロングポイントはどういったものか。どんな姿勢で仕事に臨むべきか。判断に迷ったとき、何を優先するべきか。バリューは、組織全体の輪郭を明確にしたり、行動を統一したりする「共通言語」となります。

この3つが揃って初めて、ブランドは確かな実体を持ちます。

POINT
「ビジョン」のつくりかた

ビジョンをつくるときに大切なのは、「ワクワクする未来」を描くことです。現実的かどうかは、最初はあまり気にしなくて構いません。むしろ、少し大胆なくらいの方が、人の心を動かす力を持ちます。

まず問うべきは、「私たちが事業を通じて、世の中をどう変えたいのか?」という問いです。たとえば、飲食店なら「食を通じて、人々の心を豊かにしたい」、建設会社なら「安心して暮らせる住環境を、すべての家族に届けたい」、小売店なら「本当に良いものを選ぶ楽しさを、もっと多くの人に知ってほしい」。こうした思いを言葉にしてみましょう。

ビジョンは抽象的でも構いませんが、「誰に」「何を」届けたいのかは明確にしておくべきです。「世界中の人々を幸せにする」では漠然としすぎています。「地域の子育て世代に、安心できる食卓を届ける」というように、ある程度の具体性があると、社内での共有もしやすくなります。

また、ビジョンは経営者だけで決めるのではなく、スタッフも交えて対話しながらつくることをお勧めします。現場で働く人々の視点が加わることで、より実感の伴ったビジョンが生まれるからです。

良いビジョンの例としては、「〇〇が当たり前の社会をつくる」「△△で、人々の生活を変える」といった形が挙げられます。一方で悪い例は、「業界ナンバーワンになる」「売上100億円を達成する」といった、自社の目標だけを掲げるものです。これでは、お客様や社会にとっての価値が見えず、共感を得られません。

POINT
「ミッション」のつくりかた

ミッションは、ビジョンを実現するための「手段」や「役割」を明確にするものです。ビジョンが「どこへ向かうか」なら、ミッションは「どうやって向かうか」を示します。

ミッションをつくるときのポイントは、「自分たちにしかできないこと」を見つけることです。どの企業でも言えるような一般論ではなく、自社の強みや個性を活かした独自の使命を言葉にしましょう。

たとえば、創業から長く地域に根ざしてきた企業なら、「地域のつながりを活かし、顔の見える安心を届ける」といったミッションが考えられます。逆に、新しい技術を持つ企業なら、「最新の技術で、業界の常識を変える」といった挑戦的なミッションもあり得るでしょう。

ミッションは、お客様目線で考えることが重要です。「私たちは〇〇を提供することで、お客様の△△を実現します」という構造を意識すると、わかりやすいミッションになります。

悪いミッションの例は、「高品質な商品を提供する」「お客様満足度を追求する」といった、どの企業でも言えそうな当たり前のことを並べただけのものです。これでは差別化にならず、ブランドの個性が伝わりません。ミッションは、「私たちならではの貢献」が見える内容にすることが大切です。

POINT
「バリュー」のつくりかた

バリューは、ビジョンとミッションを支える「行動の軸」です。ミッションが可能になる自社の機能や技術であったり、日々の業務で判断に迷ったとき「どう振る舞うべきか」を示す基準であったりします。

バリューをつくるときは、3?5個程度に絞り込むことをお勧めします。多すぎると覚えられませんし、「価値観」としたときには、実際の行動に落とし込みにくくなるからです。自社が本当に大切にしたいものを厳選しましょう。

具体的には、「業界トップクラスの重機を所有」「全国6大都市に中継拠点がある」「AIによる24時間の即時対応が可能」といった機能的な事実(ファクト)や、「丁寧であること」「立ち止まらず挑戦を恐れないこと」「スピード感を持って行動すること」など、さまざまな具体的価値を言語化しましょう。大切なのは、自社の機能や文化、を等身大で客観視することです。

バリューについては特に、抽象的なものとしてしまうと意味がありません。「誠実である」だけでは、何をすればいいのかわかりにくいものです。お客様からすれば、それは当然でしょう、と思うでしょう。「約束は必ず守る。可能な範囲を必ず呈示する」というように、具体的な行動レベルまで落とし込むことができれば、現場で実践しやすくなるでしょう。

バリューは社内で共有し、浸透させることが何より重要です。壁に貼って終わり、PDFにして配信のみ、ではなく、成功や失敗のケースを用いて「この判断は、私たちのバリューに合っていたか」と問い続けていくことで、組織の文化として根づいていきます。

POINT
大切なのは3つの整合性

VMVを設定するうえで最も重要なのは、この3つが互いに矛盾なく、きれいにつながっていることです。ビジョンとミッションがバラバラだったり、バリューがミッションと無関係だったりすれば、ブランドは一貫性を失ってしまいます。

たとえば、ビジョンで「革新的な未来をつくる」と掲げながら、バリューで「伝統を守る」「慎重に行動する」と言っていたら、お客様は矛盾を感じないでしょうか。ミッションで「最高品質を追求する」と言いながら、バリューで「スピード重視」を強調していたら、現場はどちらを優先すべきか迷ってしまうでしょう。

VMVの整合性を確認するには、上から順に重ねて検証することが有効です。ピラミッド構造を思い浮かべると良いでしょう。ビジョンは、ミッションを励行することで達成されるものであるか。ミッションはバリューによって下支えされているものであるか。また逆に、バリューを守ることでミッションは実行できるか。ミッションを続けていけばビジョンを実現できるか。このように一連の流れで説明できれば合格です。どこかで「違和感がある」と感じたら、見直しが必要だと考えてください。

また、VMVは社内の誰もが理解し、腹落ちできる内容でなければなりません。経営者だけが納得していても意味がないのです。スタッフ全員で対話を重ね、「これなら自分たちらしい」「これなら誇りを持って働ける」と思える言葉を探しましょう。

VMVがしっかりと整合していれば、あらゆる施策が一貫性を持ちます。広告メッセージも、商品開発も、接客の姿勢も、すべてがVMVという軸に沿って展開されるため、お客様には「この会社はブレない」という信頼感が伝わります。これこそが、ブランドの実体が生み出す力なのです。

まとめ

ブランドに実体を持たせるためには、VMV(ビジョン・ミッション・バリュー)を明確に設定することが不可欠です。ビジョンで理想の未来を描き、ミッションで果たすべき使命を定め、バリューで日々の行動指針を示す。この3つが揃い、互いに整合していることで、ブランドは確かな背骨を持ちます。

VMVの設定は、社内で時間をかけて取り組むべきプロセスです。経営者だけでなく、現場のスタッフも巻き込んで対話を重ねることで、より実感の伴った言葉が生まれます。もちろん、ブランディングの専門家に依頼すれば、より効率的に精度を上げて進めることも可能となるでしょう。

まずは今日から、「自分たちは何者で、何を目指し、何を大切にしているのか」を問いかけてみてください。その対話が、選ばれるブランドへの第一歩となるはずです。VMVという実体を持ったブランドは、お客様からの信頼を集め、価格競争に巻き込まれない強さを手に入れることができます。ぜひ、骨太のVMVづくりに取り組んでみてください。

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