はじめに
ブランディングを何度も経験してきたという方は案外と少ないものです。だからこそ、分からなくて当然。でも、知りたい。そのリアルな疑問を50個集め、本音でお答えしました。「小さな会社にも必要?」「マーケティングと何が違うの?」「B to B 企業でも必要?」などなど。最初から通してお読みいただかなくても大丈夫です。気になるところから、自由に飛ばし読みできる構成になっています。
【結論】 飾らないブランドが、人の心を動かす。
ブランディングは、怖いものではありません。絶対にしなければならないものでもありませんし、特別な会社や大きな予算を持つ企業だけに許されたものでもありません。規模の大小、業種、地域——そのどれも、ブランディングに取り組む条件とは無関係です。
では、何が必要なのでしょうか。それを突き詰めるならば、一つのことが見えてきます。「正直であること」。これがブランディングのすべての出発点であり、終着点でもあると、わたしたちは考えています。
50のQ&Aでは、費用や期間、効果測定、会社の選び方まで、さまざまな疑問にお答えしています。そして、どの問いの根底にも、この一言の上に成り立っているように思います。
【やさしく展開】 よくお尋ねいただくこと、お答えしていること。
そもそもについて(定義・概念への疑問)
- ブランディングって結局、何ですか?
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「はい、はい。あの会社(商品・サービス)ね!」という、顧客の頭の中に一定の存在感を確保するための活動のことです。
- 最小のブランディングはロゴ(ネーミング)で良いですか?
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いいえ。ロゴマークやネーミングは、例えるなら「目印」に過ぎません。印を掲げるにふさわしい「中身(姿勢や価値)」を見出すことが先決するべきことだと思います。
- マーケティングと何が違うの?
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言葉を選ばずに例えるとしたら、マーケティングは「どんな人が買ってくれそうかを明確にし、買ってください!と伝える活動」、ブランディングは「あなたのものを買いたい!と思う状態をつくる活動」という差があると思います。
- 差別化とブランディングは同じ?
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似ていますが同じであるとは言えません。差別化は「何か(例:他社製品)との比較」であり、ブランディングは「独自の価値の追求」となるのではないでしょうか。
- PR(Public Relations : 広報)との違いは?
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PRは誰かとの「関係性を構築すること(プッシュ型で知らせること)」ですが、ブランディングは「その関係性を築くための“人格(キャラクター)”」を定義し、対話していくこと」だと思います。
- デザインが良ければブランディングは成功する?
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「成功」の定義によると思いますが、一般的には「成功しない」と言えると思います。見た目だけ良くても、実態(サービス品質や接客)が伴わなければ、人々から継続した支持は得られないだろうと考えられるためです。
- ブランディングは「高級化するためのもの」?
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そうではないと思います。「安さを武器にするブランド」も存在するからです。しかし、ある「一定の“格”を創出するためのもの」とは言えるかも知れません。顧客やユーザーに対して約束を守り続けることが本質だと思います。
- 中小企業、零細企業にも必要?
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むしろ規模の小さい企業こそ必要だと思います。ブランドは、資本力のあるライバルに“勝つための武器”だと思います。
- B to B(対法人ビジネス)企業にも関係ある?
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大いにあります。選定基準が似通う B to B のビジネス分野でも、「信頼感」や「担当者の熱意」というブランドが決定打になります。例えば、「価格」と「内容」が同じとき、選ばれる企業や商品・サービスはどちらでしょうか?
- ブランディングをしないとどうなる?
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価格競争が始まります。顧客からは常に「安さ」を比較され続け、薄利の消耗戦に巻き込まれると思います。但し、「リーズナブルであること」はブランドにもなり得ますので、価格競争の全員が負ける、ということではありません。
お金と時間に関すること(コスト・期間への疑問)
- 費用はどのくらいかかる?
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外部のブランド会社に依頼される場合は範囲などによると思います。そのため価格を出しているブランド会社は少ないと思います。
しかし、消耗材のように消えて無くなる「コスト」ではなりませんので、ある種の投資として事業規模に応じた予算設定をされるのがよろしいかと思います。逆に、予算を明らかにして「どこまで、どんなことが、やれますか?」とお尋ねになるのも一手かも知れません。 - 見積の根拠は? なぜそんなに高いの?
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ぜひ、複数のブランド会社にあたってみることを推奨します。表面的なデザインだけでなく、経営層へのヒアリング、整理、戦略策定、というようなプロセスを踏み、それぞれに金額と、納品成果物を明示してくれるパートナー会社を探してみるなどするのはいかがでしょうか。
- 安く済ませる方法はない?
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あるといえば、あります。最も経済的なコストを抑えられるのは、すべてを社内で開発をすることです。その際には、経営者自身が徹底的に自社“らしさ”について言語化を行い、一貫性を自力で保つことが必要になります。
また、最も良くない結果を生みやすいのは、中途半端に社内開発を行い、途中でブランド会社に引き継ぐ、というパターンであることにもご留意いただきたいと思います。 - 期間はどのくらいかかる?
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一概には言えませんが、場合によっては、状況の整理(らしさの抽出・言語化)、ブランド体系の構築、ネーミング、ロゴ、など、それぞれ2~3ケ月程度、見込むことが必要になるかも知れません。
特定の日時が設定されている場合(例えば、4月1日から新しい社名とロゴマークを使い始めたい、など)は、最初にその旨を伝えるなどすることで、可能な限りの開発をしていただけるかと思います。 - 補助金は使える?
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はい。事業再構築補助金やIT導入補助金などの対象となるケースもあるようです。管轄する行政や補助制度利用の専門家にご相談されてはいかがでしょうか。
- ロゴ一つで数十万もするのは妥当?
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妥当性については何とも申し上げられません。そのロゴが10年、20年と「企業(商品・サービス)の顔」となることを考えますと、一律に「高すぎる」ということも言えないのではないでしょうか。蛇足ではありますが、有名デザイナー事務所さまへのご依頼ですと、ロゴのみで数百万円ということもあるという噂を耳にしたことがあります(あくまで噂です)。
- 追加費用が発生することは?
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ガイドラインの作成や、実際の販促物への展開時に発生することはあります。しかしあくまで見積書以外のオプションが発生した場合、ということになるはずです。
- 予算がないので自分でやりたい。
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可能です。まずは「自分たちは誰を幸せにしたいか」をノートに書き出すことから始められてはいかがでしょうか。
- グラフィック制作会社とブランディング会社、どっちがいい?
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「ゴールを何と設定するか」で決まると思います。「何をつくるか(何かをつくるだけでいい)」が決まっているなら制作会社の方が良い可能性があります。「何をつくるべきか(どうすればいいか)」から悩んでいるならブランディング会社の方が総合的にも、経済的にもよろしいのではないでしょうか。
- 投資回収はできる?
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ブランディングは広告のような「効果測定」が判然としないものであり、難しい問いです。短期的な売上増よりは、少し長いスパンで考えることが必要になるかも知れません。広告費の効率化や採用コストの低下、などが見えてきたのち、リピート率の向上などの形で現れるのが一般的です。ブランドは資産の一つであると考えられますので、投資としては手堅い対象であるとも考えられるのではないでしょうか。
効果や実例について(投資対効果への疑問)
- ブランディングをすれば売上は上がりますか?
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長期的には上がることが期待できると思います。しかし、短期的な即効性を求めるならば、広告(マーケティング)の方が適しているように考えられます。
- 効果をどうやって測定するの?
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なかなか難しい問いですね。指標を挙げるとすれば、指名検索数の増加、ユーザーからの好意的な声、求職応募数の増加、顧客単価の上昇、SNSなどのフォロー数やリプライの増加数などで測定することはできると思います。しかしいずれも緩やかな上昇カーブとなることが予想されます。
- 企業ブランディングの成功判断は?
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企業ブランディングの場合は、スタッフが「自社の強み」を自分の仕事に応用できるようになった時が、最初の成功のサインだと言えると思います。
- 失敗する原因は何?
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ブランドオーナー(企業ブランディングの場合は、経営者または経営陣)が「自分自身で深く考えようとしないこと」、「自分自身で言語化してみないこと」、「顧客第一主義が過ぎること」、「自分自身で決断しないこと(スタッフの多数決で決める、など含む)」がみられる場合は、期待するほどの成果が得られないケースがあるように思います。
- ロゴを変えただけで売上が上がった例はある?
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あると思います。ただし、それはロゴを「変えたから」売上が上向いたのではありません。ロゴの変更が「潜在的な価値」を正しく引き出したのだ、と考えるべきでしょう。事例としては“ヤンマーの「フライング・Y」への変更”、“スターバックスの「人魚シンボルのみ」への変更”などが挙げられると思います。
- ブランディングすると「宗教」っぽくならない?
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“共通の価値観を想起させる”という意味では近いのかも知れません。しかし、ブランディングの目的はそこにとどまりません。「関わる全ての人に、より良い選択肢を提案し合うこと」が、ブランディングの本質ではないでしょうか。
- 大手の真似(応用)は、成功への近道?
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中小企業を前提としますと、おそらく失敗となるように思います。逆に、大手ではできない、「顔が見える関係」や「ニッチ市場の寡占」、「ユーザーからの偏愛」が中小企業やその商品・サービスが身を立てるときの武器になるように思えます。
- ブランディングで採用は強くなる?
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強くなると思います。企業の考えかたに近い求職者からの応募が増えたり、入社後のミスマッチが減ったり、優秀な人材の退社率が低減されるとされています。
- 飽きられたらどうすればいい?
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ブランドは「変えてはいけないもの」ではありません。頻繁に行うことはマイナスに働きますが、ブランドの根幹(「らしさ」)は変えず、表現(見せ方)を時代に合わせてアップデート(リブランディング)することは、よく行われていることです。
- 失敗したらどうすればいい?
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誰もが知るブランドでも案外と失敗しているものです。言い方を変えると「期待したほどに効果を感じられなかった」というべきでしょうか。こうしたときに取る手段は主に2つあります。一つは「元に戻す」ことです。もう一つは「さらに新しくする」ことです。どちらが良いかは状況で判断するべきでしょう。
実践に手法ついて(やり方、進め方への疑問)
- まず何から始めればいい?
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「自分たちは何者で、なぜこの仕事をしているのか」を問い直すことから始めてください。
- コンセプトはどうやって作る?
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「自社(商品・サービス)の強み」「顧客(ユーザー)の悩み」「時代(マーケット)の要請」の三視点から考えるのが良いと思います。一点で重なるものができれば最高です。
- ターゲットは絞るべき?
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絞るほうが良いと思います。全員(いろいろな人)に好かれようとすると、誰の心にも刺さらないブランドができやすくなるからです。
- キャッチコピーは必要?
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絶対とは言えませんが、あった方がよいと思います。ブランドの約束を一行で伝える言葉があると、社内外の指針として非常に有効に働くと思います。
- 色やフォントに決まりはある?
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あります。色やフォントは、心理効果や印象づくりに影響を及ぼすと言われています。但し、競合する企業や商品・サービスとの関係についても考慮に入れ、戦略的に計画することが必要だと思います。
- ガイドライン(マニュアル)の作成は必要?
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誰が実践しても「その会社らしさ」が崩れづらくなりますので作成することを推奨します。ブランディングは息の長い活動ですから属人化しない仕組みが大切です。
- SNSはブランディングなりますか?
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なります。ブランドの人格を伝えることができなり、ファンと対話できたりと、良いことは多くあります。但し、「やればいい」というものではありませんので、必須ではないと思います。
- 写真のクオリティは重要?
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極めて重要だと思います。視覚情報はテキストとは比べ物にならない情報量を持ちます。むしろ言葉を使わずにコミュニケーションができるのであれば、その方が結びつきは強いとさえ言われています。
- 既存のイメージを壊すのが怖い。
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ご心配はごもっともです。しかしここは、壊すのではなく「磨き上げる」と考えるのはどうでしょうか。守るべき伝統と、変えるべき革新を見極めていくことがブランディングの真髄とも言えるのではないでしょうか。
- ブランディングは専門家に外注するべき?
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ここはあえて、「任せるべきです」と言います。しかし、相手がプロであるからといって、何もしなくて良い、ということではありません。ブランディングに信頼できる伴走者は重要ですが、最終的にブランドを生きるのは「あなた自身(ブランドオーナー)」であることを忘れないでください。腹落ちしないことがあれば、どんな小さなことでも納得できるまで対話を求めてください。
地方・沖縄に関すること(地域の文脈)
- 沖縄のローカル企業でもブランディングは必要?
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必要だと思います。他県や海外の市場と同じ土俵に乗るわけですから、独自性を強く打ち出すことが必要だと考えます。
- 「沖縄らしさ」は出すべき?
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出すべきだと思います。しかし、これは、単に視覚的な話ではありません。「青い海、美しい紅型、ハイビスカスと首里城」のようなステレオタイプでは、没個性となることが多いのではないでしょうか。自社にとっての「沖縄ということの意味」を深掘りすべきだ、ということです。
- 地域住民との関係性もブランディング?
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もちろんです。スタッフとして働いてくださるかたも、近隣からご出社されるのではないでしょうか。そこでの「評価」や「地域に愛されている」という事実は、ブランドの価値を強力に押し上げますし、代わりの効かない資産の一つになるはずです。
- 観光客向けと地元向け、ブランドではどちらを優先すべき?
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ブランドの根幹は一つです。相手によって変わるものではありません。使い分けをするならば「表現の切り口」だけでしょう。ブランドの本質を変えてはいけません。
- 大都市のブランド会社に頼むべき?
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協業会社の選択は、その会社の所在地で決めるべきではないでしょう。あなたのブランドに、もっとも対峙してくれるブランド会社を選択することが大切だと思います。
- 北部(やんばる)という立地は不利?
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いいえ、むしろ利点になると思います。「豊かな日本の自然の中で育まれている」という価値は、都市から発信するブランドでは言えないことです。
パートナーシップについて(ブランド会社選びの疑問)
- 良いブランディング会社を見分けるには?
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難しい質問ですね。例えば、「質問の質」を見てみるのはどうでしょうか。あなたのブランドについてどれだけ芯を喰ったことを聞いてくれるでしょうか。既存のウェブサイトを見ればすぐわかるような内容をいくつも聞いてくるようであれば、少し疑わしいかも知れません。
- 相性が合わないと思ったら?
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関係性に疑問を持っていると明確に伝えるほうが良いと思います。ブランディングは長期間の共同作業なので、信頼関係が不可欠だと思います。お互いに鬱積した思いをもったまま進行するのは建設的ではないと思います。
- 制作後のサポートはしてくれる?
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ブランド会社の多くは、ブランドがローンチした後の運用サポートを行っています。ご相談されることをおすすめします。
- ブランディングで最も大切なことは何?
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一言でいうなら、「嘘をつかないこと」だと思います。これは「現実だけを言え」と言っているのではありません。「いつかは叶えたい」という未来や理想でも、それを信じているなら明確にするべきです。この場合の嘘とは、ファクトのないハリボテで「ブランドを見せようとすること」です。誠実に「らしさ」を追求しすることが大切だと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ブランディングということが、少しでも身近に感じていただけたなら嬉しいです。
完璧なブランドを、一気に打ち立てるのはとても難しいですし、その必要もないと思っています。「自分たちは誰を幸せにしたいか」——その問いを持ち続け、まっすぐそこに向かうこと。その姿勢こそがブランディングであり、より強いブランド育成への最短ルートだと私たちは信じています。
また、こうしたことを聞いてみたい、こうしたことに迷っている、などのことがありましたら、お気軽にご連絡ください。質問が集まり次第、第二弾のQ&A記事にまとめてみたいと思っています。
