企業ブランディングの第一歩。~「CI」・「VI」・「BI」の違いと役割~

企業ブランディングにおける土台作りの重要性

はじめに

「うちの会社、ロゴを変えたらブランドイメージも変わるかな?」――そんな相談を受けることがあります。確かに、見た目を刷新すれば印象は変わります。しかし、本当にそれだけで企業ブランディングは成功するのでしょうか。

実は、企業のアイデンティティには「CI」「VI」「BI」という3つの要素があり、それぞれが異なる役割を持っています。この3つの関係性を理解しないまま表面的なデザイン変更だけを行っても、社内外に一貫したメッセージは届きません。

この記事では、CI・VI・BIの違いと役割を初心者にもわかりやすく解説します。読み終える頃には、「何から手をつけるべきか」が明確になり、自社のブランディング戦略を見直す具体的なヒントが得られるはずです。沖縄の中小企業だからこそできる、地に足のついたブランド構築の第一歩を、一緒に踏み出しましょう。

【結論】 まずは”川上(かわかみ)”を整える。VIやBIは、その後に。

結論から言えば、企業ブランディングは「CI(コーポレート・アイデンティティ)」を起点に考えるのが正解です。CIとは、企業が生活者に対して「自分たちは何者であるか」「何を大切にしているか」を明文化した、いわば会社の背骨です。(少し詳しく言うと、その上位概念として「MI(マインド・アイデンティティ)」があり、企業理念や存在意義といった”想い”の部分を策定します。一般的には、このMIの考え方がCIに含まれることも多く、両者は密接に結びついています。)

そして、CIという土台の上に成り立つのが「VI(ビジュアル・アイデンティティ)」と「BI(ビヘイビア・アイデンティティ)」です。VIはロゴや色、デザインといった視覚表現を、BIは従業員やスタッフの言動や接客、サービス提供の姿勢を指します。

つまり、CI(理念・方向性)が”川上(かわかみ)”、VI・BIはその”川下(かわしも)”。水の流れと同じで、上流が整っていなければ、下流にきれいな水は流れません。ロゴを変えても、名前を変えても、行動指針を見直しても、根っこにあるCIがブレてしまっていれば、社内外に一貫性をもって伝えられません。

だからこそ、ブランディングを考えるなら、まずはCIを見つめ直す。その後にVIやBIを整えていく。――この順序を守ることが、遠回りに見えて、実は最も確実な道です。

【やさしく解説】 CI・VI・BIの違いと、それぞれの役割

CI
CI(コーポレート・アイデンティティ)とは | 企業の”芯”を言葉にする

CIは、企業が持つ価値観や使命、ビジョンを統合した概念です。簡単に言えば、「うちの会社は何のために存在し、どんな価値を届けたいのか」を明文化したものと言えます。

一般的に、CIにはMI(マインド・アイデンティティ)という考え方が含まれています。MIとは、企業理念や経営哲学、存在意義といった、最も根源的な”想い”の部分。このように厳密にはMIとCIは区別される概念ですが、CIはMIを内包する形で使われることが多く、両者を明確に分けないケースも少なくありません。つまり、CIを語るときには、自然とMIにも触れていることになります。

たとえば、「地域に根ざし、お客様の笑顔を第一に考える」といった理念は、まさにMI的な要素。それを軸にして、事業の方向性やブランドメッセージを整理していくのがCIの役割です。

このCIがしっかり定まっていると、社員一人ひとりが「自分たちは何を目指しているのか」を理解でき、判断に迷ったときの指針にもなります。また、採用活動や取引先との関係構築においても、「この会社らしさ」が伝わりやすくなり、共感を呼ぶ土台となるのです。

逆に、CIが曖昧なままだと、社内の方向性がバラバラになり、対外的なメッセージにも一貫性が生まれません。ロゴを変えても、キャッチコピーを作っても、「話はわかるが、結局、何を一番大切にしているのか分からない」と思われて企業ブランドが定まらないのは、このCIが不明瞭だからということが多いです。

沖縄の中小企業であれば、「島の資源を活かす」「恵みの大自然に感謝する」「地域のつながりを大切にする」といったような、地域ならではの想いをCIに反映させることで、他にはない独自性を打ち出せます。CIは、企業ブランディングの上流に位置する、最も重要な”芯”のひとつです。

VI
VI(ビジュアル・アイデンティティ)とは | 理念を”可視化”する

VIは、CIで定めた企業の価値観や方向性を、視覚的に表現したものです。具体的には、ロゴマーク、コーポレートカラー、フォント、名刺、パンフレット、ウェブサイトのデザインなど、目に見える要素すべてが該当します。

「第一印象は見た目で決まる」とよく言われますが、企業も同じ。VIが整っていると、初めて名刺を受け取った人や、ホームページを訪れた人に、「この会社はしっかりしている」「センスがある」といった印象を与えられます。

ただし、ここで注意すべきは、VIは単なる”飾り”ではないということ。CIで定めた理念や価値観を、デザインという言語で翻訳したものがVIです。たとえば、「温かみのある地域密着企業」を目指すなら、ロゴには柔らかい曲線や優しい色合いを取り入れる。「革新的で挑戦的な姿勢」を打ち出すなら、シャープなラインや鮮やかな色を選ぶ。このように、CIとVIは連動していなければ意味をなしません。

逆に言えば、CIが定まっていないまま「とりあえずロゴをかっこよく」と進めても、デザイナーは何を表現すればいいのか分からず、結果的に表面的なデザインに終わってしまいます。そして、そのロゴを見た人も、「なんとなくオシャレだけど、何の会社か分からない」という印象を持つでしょう。

沖縄の企業であれば、海や太陽、サンゴ、ハイビスカス、シーサーといったモチーフを取り入れることもありますが、それも「地域らしさを大切にする」というCIがあってこそ。全く違う世界観のCIを掲げながら、ただ「沖縄っぽさが欲しい」という理由だけでビジュアル化を図っても、ブランドの一貫性は生まれません。

VIは、CIという”設計図”をもとに描かれる”外観”。その役割を理解してこそ、デザインが企業の武器になるのです。

BI
BI(ビヘイビア・アイデンティティ)とは | 理念を”行動”に移す

BIは、企業の価値観や理念を、従業員の行動や接客、サービス提供の姿勢として表現するものです。どれだけ立派な理念を掲げ、洗練されたロゴを持っていても、実際の対応が冷たかったり、約束を守らなかったりすれば、ブランドの信頼は一瞬で崩れます。BIは、まさに「言葉ではなく、行動で示す」部分です。

たとえば、「お客様第一」を掲げる企業なら、電話対応は丁寧か、クレームへの対応は誠実か、納期は守られているか――こうした日々の積み重ねが、BIを形作ります。沖縄の企業であれば、「ゆいまーる(助け合い)の精神」や「おもてなしの心」といった地域文化を、従業員の行動に落とし込むことで、独自のBIを構築できるでしょう。

BIで大切なのは、全社員が同じ方向を向いていること。経営者だけが理念を語り、現場がそれを知らないのでは意味がありません。CIで定めた価値観を、具体的な行動指針として社内に浸透させ、日常業務の中で実践できる仕組みを作ることが求められます。

たとえば、朝礼で理念を唱和する、接客マニュアルに行動基準を盛り込む、評価制度に理念に沿った行動を反映させる――こうした取り組みが、BIを実効性のあるものにします。

また、BIはVIとも連動します。清潔感のあるオフィス、整理整頓された店舗、統一感のある制服――こうした視覚的な要素も、従業員の行動に影響を与えます。「見た目がきちんとしている」ことで、自然と行動も引き締まるのです。

BIが機能すれば、顧客満足度が高まり、リピーターが増え、口コミで評判が広がります。そして、それが企業ブランドの信頼につながる。つまり、BIは「企業の約束を、行動で証明する」役割を担っているのです。

まとめ

企業ブランディングを考えるとき、多くの経営者が「ロゴを変えよう」「ホームページを刷新しよう」と、VIから手をつけがちです。しかし、それでは根本的な解決にはなりません。大切なのは、まず”かざかみ”であるCIを見つめ直すこと。企業の存在意義や価値観を明確にし、その土台の上にVIやBIを積み上げていく――この順序を守ることが、一貫性のあるブランドを築く近道です。

CIが整えば、VIはそれを視覚的に表現するデザインとなり、BIは日々の行動を通じて理念を体現します。3つが調和してこそ、社内外に「この会社らしさ」が伝わり、信頼が生まれるのです。

沖縄の中小企業だからこそ、地域の文化や人とのつながりを大切にしながら、自社ならではのアイデンティティを磨いていける強みがあります。まずは、自社のCIを見直すことから始めてみませんか。その一歩が、10年後、20年後も愛される企業ブランドへとつながっていくはずです。

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