記憶に残るブランド名を創るための7つの工夫

記憶に残るブランド名を創る

はじめに

「新しい商品やサービスのブランド名、どうやって決めればいいんだろう?」、「会社名を変更したいけれど、何を基準に考えればいいのか」。こうした悩みを抱えている経営者や営業責任者の方は多いのではないでしょうか。ブランド名は会社や商品の顔となる重要な要素ですが、一度決めると頻繁には変えられないものであるため、慎重に決める必要があります。

しかし、いざ考え始めると選択肢が多すぎて決められなかったり、社内で意見が分かれて前に進まなかったりすることもあります。「センスがないから良い名前が思いつかない」と諦めてしまう方もいるかもしれません。

実は、記憶に残るブランド名を創るには、センスや感覚だけに頼るのではなく、いくつかの具体的な工夫やポイントがあると言われています。この記事では、沖縄の中小企業が実践できる、ブランド名づくりの7つの工夫をご紹介します。読み終わる頃には「こういう視点で考えればいいんだ」という明確な道筋が見えてくるはずです。

【結論】良いブランド名は「覚えやすさ」と「意味の深さ」の両立から生まれる

結論から申し上げると、記憶に残るブランド名を創るためには「覚えやすさ」と「意味の深さ」を両立させることが重要です。どちらか一方だけでは不十分で、両方のバランスを取ることで、長く愛されるブランド名が生まれます。

覚えやすさとは、シンプルで発音しやすく、一度聞いたら忘れにくいということです。複雑すぎる名前や長すぎる名前は、お客様の記憶に残りにくく、口コミでも広がりにくくなってしまいます。

一方、意味の深さとは、そのブランド名に込められた想いやストーリーが感じられるということです。単なる語呂合わせではなく、なぜその名前にしたのか、どんな価値を届けたいのかが伝わる名前は、お客様の心に響きやすくなります。

さらに重要なのは、実際に使えるかどうかという実務的な観点です。どんなに素晴らしい名前でも、商標が取得できなかったり、ドメインが使えなかったりすれば、ビジネスに支障をきたします。

今回ご紹介する7つの工夫は、これらすべての要素を満たすブランド名を創るための具体的な方法です。沖縄の中小企業が持つ地域性や独自性を活かしながら、お客様の記憶に残り、長く愛されるブランド名を生み出すヒントをお伝えしていきます。

【やさしく解説】 7つの工夫を実践しよう

POINT
簡潔で覚えやすい長さに

ブランド名の第一条件は「覚えやすいこと」です。どんなに素晴らしい意味を込めても、お客様が覚えられなければ意味がありません。理想的なのは、3文字から5文字程度の長さです。

人間の短期記憶には限界があり、長すぎる名前は記憶に残りにくくなります。また、会話の中で自然に使えるかどうかも重要なポイントです。「昨日○○で買ったんだけど」とスムーズに言える名前は、口コミでも広がりやすくなります。

さらに、音の響きも大切です。発音しやすく、リズム感のある名前は耳に残りやすい特徴があります。濁音や半濁音を適度に入れることで、印象的な響きを作ることもできます。

沖縄の中小企業の場合、地域の言葉や方言を取り入れることで、親しみやすさと独自性を同時に実現できます。ただし、本土の人にも理解しやすい配慮も必要です。地域性を活かしながら、シンプルさを保つバランスが重要になります。

POINT
事業や商品の内容が伝わる工夫を

ブランド名を聞いただけで「どんな事業や商品なのか」がイメージできると、お客様の理解が深まります。完全に説明しきる必要はありませんが、何らかのヒントが含まれていると効果的です。

例えば、業種を連想させる言葉を組み合わせたり、提供する価値を表現したりする方法があります。「○○ラボ」「○○工房」「○○ハウス」といった後ろにつける言葉で業種を示すことも一つの手法です。

ただし、あまりに直接的すぎると、事業拡大の際に制約となる可能性があります。例えば「パン屋○○」という名前だと、将来的にカフェ事業を始める時に違和感が生じるかもしれません。ある程度の拡張性を持たせることも考慮しましょう。

沖縄で事業を展開する場合、地域特性や文化的背景を名前に反映させることで、「沖縄らしさ」を感じてもらえます。観光客をターゲットにする場合は特に、地域性が伝わる名前が強みとなります。

POINT
背景にあるストーリーを語れるように

優れたブランド名には、必ず背景にストーリーがあります。「なぜこの名前にしたのか」を語れることで、お客様との感情的なつながりが生まれます。

ストーリーの源泉は様々です。創業者の想い、地域の歴史や文化、大切にしている価値観、お客様への約束など、どれも魅力的なストーリーになり得ます。重要なのは、そのストーリーが自社の理念や事業内容と一貫していることです。

例えば、祖父母の代から続く技術を受け継いでいるなら、その歴史を名前に込めることができます。地域の自然や文化から着想を得た名前なら、沖縄への愛着や貢献の姿勢が伝わります。

ストーリーが語れるブランド名は、お客様にとっても人に話したくなる話題となります。「あの店の名前、実はこういう意味があるんだよ」という会話が生まれることで、自然な口コミ効果も期待できるのです。

POINT
商標登録とドメイン取得の可能性を確認

どんなに気に入った名前でも、実際に使えなければ意味がありません。商標登録ができるか、希望するドメイン名が取得できるかを、必ず事前に確認しましょう。

商標登録は、他社に同じまたは類似の名前を使われないようにするための重要な手続きです。特許庁のデータベースで既存の商標を検索できますが、専門的な判断が必要な場合は弁理士に相談することをおすすめします。費用はかかりますが、後のトラブルを避けるための必要な投資と考えましょう。

ドメイン名も同様に重要です。ウェブサイトやメールアドレスで使用するため、希望するドメインが取得できるかを確認します。「.com」や「.jp」などの一般的なドメインが取得できない場合、代替案を考える必要があります

沖縄の企業であれば「.okinawa」といった地域ドメインを活用する方法もあります。地域性を強調でき、かつ希望する名前が取得しやすいというメリットがあります。

POINT
時代の変化に耐えられる普遍性を

ブランド名は長く使い続けるものですから、一時的な流行に左右されない普遍性が必要です。今は流行している言葉や表現でも、5年後、10年後には古臭く感じられる可能性があります。

特に注意したいのは、流行語や外来語の安易な使用です。カタカナ語は新鮮に感じられる反面、時代遅れになりやすいリスクもあります。使う場合は、本当にその言葉が自社のブランド価値を表現しているか、よく吟味しましょう。

一方で、古典的な日本語や地域に根ざした言葉は、時代を超えて受け入れられやすい特徴があります。沖縄の場合、琉球の歴史や文化に由来する言葉は、普遍性と独自性を兼ね備えた選択肢となり得ます。

ただし、古風すぎて現代のお客様に受け入れられないのも問題です。伝統と現代性のバランスを取りながら、長く愛される名前を目指しましょう。

POINT
発音のしやすさと音の印象を意識

ブランド名は、視覚的に見るだけでなく、声に出して呼ばれることも多くあります。発音しにくい名前は、お客様に覚えてもらいにくく、口コミでも広がりにくくなります。

発音のしやすさを確認するには、実際に声に出して何度も言ってみることが大切です。舌がもつれたり、言いにくさを感じたりする場合は、再考の余地があります。また、電話で伝える際にスムーズに伝わるかどうかも重要なポイントです。

音の印象も無視できません。明るくポジティブな印象を与えたいなら、母音の「あ」「い」を多く使うと効果的です。逆に、落ち着いた印象を与えたいなら「お」「う」を活用します。硬さや柔らかさも、音の選び方で調整できます。

沖縄の言葉には独特の音韻があり、それ自体が個性となります。ただし、全国展開を視野に入れる場合は、方言がわからない人でも発音できるかどうかも考慮する必要があります。

POINT
多角的に検討し、最後は責任者に一任する

ブランド名は、最終的に経営者が決断するものですが、その前に複数の候補を用意し、客観的な意見を集めてみるべきです。自分の解釈と、他の人の解釈には差があり、実はネガティブな印象を与える可能性もあったと気づくこともよくあるケースです。

意見を集める相手は、社内のスタッフ、既存のお客様、家族や友人など、様々な立場の人が望ましいでしょう。それぞれの視点から率直な感想をもらうことで、自分では気づかなかった問題点や魅力が見えてくるでしょう。当然ですが、会社の上層部の人の考えを先に明かしてしまうことは、他の方々に大きく影響してしまうので避けなければなりません。

特に重要なのは、ターゲットとなるお客様層に近い人の意見です。若い世代向けの商品なら若者の、年配層向けなら年配の方の意見を重視すべきです。沖縄の場合、島内向けか観光客向けかでも、受け取られ方が変わってくるでしょう。

ただし、意見を集めすぎて決められなくなることは避けたいところです。会社の代表である社長の1票と、たとえば社長の家族の1票は同じ価値ではありません。最終的には経営者の想いと判断を優先し、自信を持って決定することが大切です。完璧な名前は存在しないと割り切り、一度決めたらゆっくりと育てていくという覚悟にも似た堅い想いを持ち続けましょう。

まとめ

記憶に残るブランド名を創ることは、決して簡単ではありませんが、今回ご紹介した7つの工夫を実践することで、確実に良い結果につながります。重要なのは「覚えやすさ」と「意味の深さ」を両立させ、実務的にも使える名前を選ぶことです。

簡潔で覚えやすく、事業内容が伝わり、ストーリーを語れる名前。そして商標やドメインが取得でき、時代を超えた普遍性を持ち、発音しやすい名前。これらの要素を満たすブランド名は、お客様の記憶に残り、長く愛され続けるでしょう。

沖縄の中小企業の皆様には、地域という独自の資源があります。琉球の歴史や文化、言語(うちなーぐち)、美しい自然、人々の温かさなど、ブランド名に込められる要素は豊富にあります。これらを活かしながら、7つの工夫を実践してみてください。

ブランド名は一度決めたら終わりではありません。その名前に込めた想いを、日々の事業活動で体現し続けることで、名前に命が吹き込まれていきます。まずは候補をいくつか書き出すことから始めてみませんか。あなたの会社らしい、記憶に残るブランド名が必ず見つかるはずです。

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