ブランディングって、何から始めればいいの?

はじめに

「ブランディングは大切だと聞くけれど、実際に何から始めればいいかわからない」「専門的な知識がないと無理なのでは?」こうした不安や疑問を抱えている経営者の方は多いのではないでしょうか。特に沖縄の中小企業やスタートアップの場合、限られた人員とリソースの中で「どこから手をつければいいのか」と迷ってしまうのは当然のことです。

しかし、安心してください。ブランディングの最初の一歩は決して難しいものではありません。ブランドに関する専門的な知識がなくても大丈夫です。綿密なマーケティング手法を身につけたりする必要もありません。実は、どんな会社でもその日から始められる、シンプルで確実な方法があります。この記事では、そのスタートラインについて具体的にお伝えしたいと思います。

【結論】 ブランディングのスタートは意識の「言語化」から

ブランディングはまず「自分たちが何を大事にしているか」を言葉にすることから始まります。「らしさ」について自覚すること、と言い換えられるかも知れません。まずは「私たちの会社は何を大切にし、どうありたいのか」という根本的な問いに向き合うことがから始まるのです。

多くの経営者が「ブランディング=見た目を整えること」と考えがちですが、それは誤解です。外側の形を整える前に、内側にある「思い」や「価値観」を明確にすることが何よりも重要です。

この意思が明確になると、その後のすべての判断基準ができあがります。どんな商品を作るか、どんなサービスを提供するか、どんなお客様と関わりたいか、どんなスタッフと働きたいか。『何をするべきで、何をしてはならないのか』。これらすべてが、一本の軸でつながるようになります。

逆に言えば、この軸がないままロゴやキャッチコピーを作っても、表面的な飾りにしかなりえないのです。お客様にも「何の会社(商品)かよくわからない」という印象を与えてしまいます。だからこそ、まずは自分たちの「意思」を言葉にすることから始めるのです。

「なるほど、まずは自分たちが何を大切にしているかを整理すればいいのか」と思っていただけたでしょうか。特別な専門知識は必要ありません。自分たちの真っ直ぐな想いと、向き合う時間こそが必要なのです。

【やさしく解説】 なぜ、意識の「言語化」から始めるべきなのか

POINT
ネーミングやロゴから創ってはいけない理由

多くの会社がブランディングと聞いて最初に思い浮かべるのは、ロゴデザインや会社名の変更、キャッチフレーズの制作などではないでしょうか。確かにこれらは目に見えて変化がわかりやすく、「ブランディングをしている」という実感も得られます。しかし、ここには大きな落とし穴があります。


ロゴやネーミングは、あくまでもブランディングの「結果(出口)」であり「表現の手段」に過ぎません。家を建てる時に、基礎工事の工程をそこそこに、いきなり外壁を塗りはじめるようなものです。どんなに素晴らしいデザインのロゴを作っても、「何を表現したいのか」「何を大切にしているのか」という明確な意思を表現できていないのであれば、何も意味しない単なる飾りでしかありません。


具体的に説明してみます。例えば「信頼」を大切にする会社と「革新」を重視する会社では、同じ業界であったとしても、一般的に考えれば、そのロゴは全く違うカラーとデザインになるはずです。まず「信頼」や「革新」という核となる価値観があり、それを視覚的に表現したものがロゴであるからです。つまり、中身が決まっていない段階で外側の形を作っても、一貫性のない、伝わりにくいブランドになってしまいます。そこには決定を下せる人の“好き嫌い”があるだけだからです。


アウトプットから始めるブランディングは、結局は見た目だけの軽薄なものになりがちです。お客様は口には出さないまでも「きれいなロゴだけど、結局この会社は何を思っているの?何をしようとしているの?」と疑問に思うでしょう。だからこそ、まずは中身(意思・価値観)をしっかりと固めることから始める必要があるのです。

POINT
マーケティング調査は補助輪と考えたい

ブランディングを始める際、「まずは市場調査をしよう」「競合他社を分析しよう」「顧客アンケートを取ろう」と考える経営者も多いでしょう。確かにこれらの調査は有用な情報を提供してくれますし、無視すべきものではありません。しかし、調査結果に頼りすぎることには大きなリスクがあります。


最大の問題は「ユーザーに合わせすぎると、本来の自分らしさが消えてしまう」ことです。市場調査の結果、「お客様はAを求めている」とわかったとしても、自分たちがAに情熱を感じられなければ、長続きしません。表面的には要望に応えているように見えても、心のこもらないサービスになってしまいます。
また、競合他社の成功事例を真似しても、同じような会社が増えるだけで差別化にはなりません。「うちも他社と同じようなことをやっている」という状況に陥り、結局は価格競争に巻き込まれてしまいます。


マーケティング調査は「自転車の補助輪」のようなものです。最初のうちは転ばないよう支えてくれますが、いつまでも頼っていては本当の意味でのバランス感覚は身につきません。調査結果は参考程度に留め、最終的には「自分たちはどうしたいのか」という内なる声に耳を傾けることが重要です。そのうえで、お客様の趣向との接点を探すべきなのです。


沖縄の中小企業の強みは、内地にはない特長を持っていることに他なりません。お客様が求めるものだけを追ってしまうと、結局「沖縄らしさ」を失うことになります。それは内地の企業との競争を意味し、自ら勝機を放棄することにも繋がりかねません。自分たちの良さをベースに、お客様とのコミュニケーションする手段をさぐるのが、言ってみればブランディングの役割の一つだとも言えるでしょう。

POINT
小さな会社でもできる最初の一歩

では、具体的にどこから始めればよいのでしょうか。難しく考える必要はありません。まずは「私たちが大事にしていることは何か」を棚卸しすることから始めましょう。


最初のステップは、思いつくままに書き出すことです。「お客様を大切にしたい」「丁寧な仕事をしたい」「地域に貢献したい」「スタッフが働きやすい環境を作りたい」「新しいことにチャレンジしたい」など、どんなことでも構いません。正解はありませんので、素直な気持ちで書き出してみてください。


次に「これからも大切にしていくべきものは何か」という視点で優先順位をつけて、3つから5つに絞り込みます。すべてが重要だと思うかもしれませんが、絞り込むことで「特に大切なもの」が見えてきます。この絞り込みこそが、ブランドの核を作る作業です。そして、それらの中で最も大事にしたいもの、それを失ったら自分たちとは言えなくなるもの、が見つかれば、それがブランディングの最も核心に近いものだと言えるでしょう。


そして最も重要なのは、それを日々の行動やサービスに落とし込み、事実・実績としていくことです。例えば「お客様を大切にしたい」とするなら、電話やメールの対応、商品の説明、アフターサービスのすべてで体現する必要があります。「地域に貢献したい」とするなら、地元の素材を使う、地元のイベントに参加する、地域の課題解決に取り組むなど、具体的な行動に移していきます。


ネーミングやロゴは、こうした核となる価値観が固まった後で考えるべきものです。つまり、これらは考え方や概念を視覚化したツールなのです。核がしっかりしていれば、自然と「らしい」カラーやデザイン、ネーミングが、少なくともそのヒントとなる手がかりは、たくさん思い浮かぶようになってくるはずです。
この作業は特別な予算も専門知識も必要ありません。紙とペンがあれば今日からでも始められます。一人でも、複数人でもできます。個々にでも、話し合ってもできます。大切なのは、真剣に現在と未来の自分たちと向き合う時間をもつことです。

まとめ

ブランディングは決して特別な専門知識の学習から始める必要はありません。最も重要なのは、自分たちの意思を言葉にしてみることです。「私たちは何を大切にし、どうありたいのか」という問いをもつことから、すべてが始まります。

ロゴデザインやマーケティング調査は、その後に続く手段にすぎません。まずは自分たちの価値観を明確にし、それを日々の行動で体現していく。この積み重ねこそが、本物のブランドを作り上げる基盤となります。

沖縄の中小企業の皆様も、思い立ったが吉日です。今日から始めることができます。特別な予算も必要ありません。ぜひ、「私たちが大切にしていることは何か」を書き出すことから始めてみてください。その小さな一歩が、やがて大きなブランドの力となって、お客様や地域社会から愛される会社へと成長させてくれるはずです。

あなたの会社や商品のブランドづくりは、今この瞬間からでも始められるのです。

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