はじめに
ブランディングを進める上で避けて通れないのが、自社の”らしさ”を言語化することです。しかし、多くの経営者が「うちの会社らしさって何だろう?」、「どう言えば良いんだろう?」と悩んでいると言われています。漠然と「お客様ファースト」や「品質重視」、「付加価値のある製品(サービス)」といった言葉は思い浮かぶものの、それが本当に自社の特徴を表しているのか確信が持てないのではないでしょうか。
よくあるブランディング指南では「10年後、20年後の姿をイメージして書き出しましょう」といったような抽象的なアドバイスが多く見られますが、実際にはもっと具体的で実務的な方法が必要です。この記事では、沖縄の中小企業やスタートアップの経営者が、自社の強みを明確な言葉にできるよう、今日からすぐに実践できる方法を解説していきます。
【結論】 “らしさ”は多角的な視野から浮かび上がる
結論から申し上げますと、会社の”らしさ”は一つの視点からではなく、多角的な視野を集めることで明確になります。自分だけで考え込むのではなく、様々な関係者の目線から「どう見られたいか」「どう思われたいか」を整理することで、自社の本当の特徴が見えてくるのです。
具体的には、お客様、地域社会、従業員、取引先、そして経営者自身など、会社を取り巻く様々な立場の人々の視点から自社を見つめ直します。それぞれの視点で「どう思われたいか」を明確にし、その共通点や重なり合う部分を見つけることで、ブレない”らしさ”が浮かび上がってきます。
この方法の優れた点は、特別な専門知識や高額なコンサルティングが不要なことです。紙とペンがあれば、今日からでも始められます。また、一人で抱え込まず、スタッフや身近な人との対話を通じて進めることができるため、経営者にとって負担の少ない方法でもあります。
「なるほど、自分たちでもできそうだ」と感じていただけたでしょうか。確かに時間はかかるかもしれませんが、決して難しいものではありません。大切なのは、様々な角度から自社を見つめる習慣を身につけることです。
【やさしく解説】 “らしさ”を見つける、8つの視点
最も重要な視点の一つが、お客様から「どう思われたいか」です。ここで大切なのは「どう思われているか」ではなく、「どう思われたいか」という未来志向の視点です。
具体的に考えるコツは「お客様がうちの会社のことを友人に紹介するとき、どんな風に説明してもらいたいか」を想像するという方法が挙げられます。「あの会社は○○だからオススメよ」といった会話を思い浮かべてみてください。その○○に入る言葉が、あなたの会社がお客様に持ってもらいたい印象の一つかも知れません。
沖縄の中小企業の場合、「地元」「自然環境」「丁寧なものづくり」「アットホーム」「伝統と革新」といった特徴の周辺にヒントがあることも見受けられます。
お客様との関係性も”らしさ”を決める重要な要素です。「長期的なパートナー関係」を目指すのか、「気軽に相談できる身近な存在」になりたいのか、「専門家として頼られる存在」でいたいのかで、会社の振る舞い方は大きく変わります。
理想的な関係を考える際は「お客様が困ったとき、最初に思い出してもらえる会社になりたいか」といった具体的なシーンを想像してみましょう。沖縄という地域特性を考えると、お客様との距離が近く、「家族のように親しい関係」といった独自の関係性を構築することが可能です。
沖縄の中小企業にとって、地域社会からの評価は特に重要な要素です。「地域経済を支える企業」「地域文化を大切にする会社」「若者の雇用創出に貢献する会社」など、様々な社会的役割が考えられます。
具体的には「10年後、地域の人々にどう語り継がれたいか」を考えてみてください。「あの会社があったから地域が活性化した」「いつも地域のことを考えてくれる会社だった」など、どのような評価を得たいかを明確にしましょう。
働くスタッフから「どう評価されたいか」という視点も欠かせません。従業員満足度は顧客満足度に直結するため、内部からの評価は外部への印象形成にも大きく影響します。
考え方のコツは「スタッフが家族や友人に『いい会社で働いている』と自慢できるのは、どんな部分か」を想像することです。給与や待遇も大切ですが、それ以上に「誇りを持って働ける理由」を提供できる会社を目指しましょう。
競合他社との差別化は、”らしさ”を際立たせる重要な要素です。単純に「他社より優れている」という優劣の比較ではなく、「他社とは異なる価値を提供している」という違いを明確にすることが大切です。
具体的には「お客様が同業他社と比較検討するとき、どんな基準で選んでもらいたいか」を考えてみましょう。沖縄市場の特殊性を活かして「本土の企業にはできない○○」「沖縄だからこそ実現できる△△」といった独自の価値提案ができれば、他社との明確な違いを打ち出すことができます。
取引先や協力会社、金融機関などのビジネスパートナーからの評価も、会社の”らしさ”を形成する重要な要素です。「信頼できる取引相手」「長期的な関係を築ける会社」「約束を守る会社」など、様々な評価ポイントがあります。
特に重要なのは「この会社と組むことで、お互いにメリットが生まれる」と感じてもらえることです。沖縄の場合、島内の企業同士のネットワークが重要な役割を果たします。「地域の企業同士で支え合う」といった共同体意識を大切にする会社として認識されることで、強固なビジネス基盤を築くことができるでしょう。
中小企業の場合、経営者の人柄や価値観が会社の”らしさ”に大きく影響します。「誠実な人」「情熱的な人」「親しみやすい人」「地域愛の強い人」など、様々な人物像が考えられます。
考え方のヒントとして「10年後、地域の人々に『あの社長はこんな人だった』と語り継がれたいイメージ」を思い浮かべてみてください。その理想像に向かって日々の言動を調整していくことで、自然と会社全体の”らしさ”も形成されていきます。
実際の商品やサービスを体験したお客様に「どんな印象を残したいか」という視点です。「安心感を与えたい」「驚きや感動を提供したい」「心地よさを感じてもらいたい」など、感情面での印象を明確にすることが重要です。
具体的には「お客様がサービスを利用した後、どんな気持ちになってもらいたいか」を想像してみてください。その時の感情が、あなたの会社が目指すべき”らしさ”の重要なヒントとなります。
これらの8つの視点から得られた回答を整理し、共通するキーワードや価値観を見つけることで、自社の”らしさ”の輪郭がはっきりと浮かび上がってきます。多角的に洗い出した視点が積み重なることで、ブレのない、説得力のある”らしさ”を言語化することができるのです。
まとめ
会社の”らしさ”は一発で決まるものではありません。お客様、地域社会、従業員、取引先など、様々な関係者の視点から「どう思われたいか」を整理し、その共通点を見つけることで明確になってきます。多角的な視点の積み重ねこそが、ブレのない”らしさ”を生み出す確実な方法なのです。
今回ご紹介した8つの視点は、特別な専門知識や費用をかけることなく、今日からでも実践できる方法です。一度にすべてを完璧にする必要はありません。まずは関心の高い視点から始めて、徐々に全体像を明確にしていけばよいのです。
沖縄の中小企業やスタートアップの経営者の皆様、まずは自社に当てはめて考えてみませんか。あなたの会社ならではの”らしさ”は、必ずこれらの視点の中に隠れています。それを見つけ出し、言葉にすることで、お客様や地域社会から愛される、持続可能な会社へと成長していくことができるでしょう。
